out-of-humor2
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せり出して
 数日前から「せり出す」という言葉が妙に気になっている。
 そればかりか、考えるうちだんだんイライラしてきて、実際に発語しては舌打ちなどをしている。馬鹿げた話だが、一度気になりだすと止むに止まれぬ。
 鬱陶しいばかりの圧(あつ)を感じる。突き出すでもなく飛び出すでもなく「せり出す」とは何事だろう。爆発力や瞬発力がない代わりに、あつかましさだけは一人前である。
 とても気になる。気になるあまり、「せり出して」というワードで検索にかけたりしている。我ながらキチガイじみているが、バイクのメンテナンスに関するサイトで以下のような文章を見つけた。

「油圧ブレーキはパッドが減ってくるとピストンが自動的にせりだして遊びを調整する構造になっています。パッド交換をする時点でパッドは減っているはずですので減ったぶんピストンはせりだしているはずです。ピストンがせりだしているので残量が充分あり厚みがある新品のパッドはそのままでは入りません。そこでピストンを戻します。要は引っ込むようにおしてやればよいです」

 リアブレーキパッドというものを交換する際の手引きらしいが、意味は全然分からん。僕はバイクはおろか車の知識すらゼロなのでこれはもう見事なほど全く分からんが、要するにピストンなるものが、なにか分不相応な感じで自らを主張してやまないのであろう。
「遊びを調整する」役割があるらしいので、少なくとも他人に不利益を及ぼすのみではなく、まずまず良いせり出し方をしているようである。大体せり出すような奴は悪党と相場は決まっているから、これは珍しい奴だ。それでも、「残量が充分あり厚みがある新品のパッド」が入るのを妨害する場面では、いかにもせり出した奴らしいふてぶてしさを見せている。
 土壇場、引っ込むように押されるのは、いい気味だが、本人にとっては納得のいかぬことであろう。少し哀れにも思う。
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後先
 すっかり“普通の”クイズ番組となってしまった「Qさま!!」であるが、惰性でなんとなく見続けている。

 ある日の社会の問題で、歴史上の人物の写真(絵)が10枚出て、それを見て人名を答えろというのがあった。
 番組を見ている人は分かると思うが、写真(絵)には1~10までの番号がふられており、番号が大きくなるほど難易度があがる。
 その6番か7番か忘れてしまったが、加藤清正の肖像画があった。
S.jpg

(確かこういう絵であった)
 僕は意気揚々と
「加藤清正っ!」と答えた。
 嫁はなにやら一心に画面を見つめていた。
 そしていざ解答者が答える段になり、誰だったかこれまた忘れてしまったが、6番だか7番だかを選択し、「加藤清正」と書いた。正解であった。当然のことだが、僕も正解していた。
 ここまでは何の面白味も無い話だが、次の嫁の発言に僕はかちんときた。
 嫁は画面に向かって、「加藤清正」と答えた奴に向かって

「すごい!」と言った。

「『すごい!』ってお前、別にすごないやん。第一、加藤清正って俺言うたがな。こいつがすごいんやったら俺が言うたときにすごいって言わなあかんがな」
「………」(嫁無言)
「俺も正解しとんねんから、俺にも『すごい!』って言うてくれなあかんがな」
「言うてない」
「は?」
「加藤清正なんて、あんたは言うてない」
 嫁のこの信じられない言葉に僕は愕然とし、そして逆上した。
「言うたやん!。『加藤清正っ!』って俺言うたやん!。なんで!?、俺はっきり『加藤清正っ!』って言うたがな!」
「………」(嫁無言)
「言うた。絶対に言うた。お前、なんで聞いてないかなあ。俺答えてるのになんで聞いてないかなあ」
 しばらく無言であった嫁がようやく口を開いた。それは僕にとってさらに信じられない言葉であった。

「後(あと)で言うた」

「後(あと)で言うた?。後(あと)ってなんやねん。なんの後(あと)で言うたんや。後(あと)で言うたりするかいな。先に言うとるやないか。誰が後(あと)で言うたんや」
 嫁はもう次の問題を考え始めていた。僕ひとり興奮していた。
漱石's jammin'
(「永日小品」より)

 元日

 雑煮を食って、書斎に引き取ると、しばらくして三四人来た。いずれも若い男である。そのうちの一人がフロックを着ている。着なれないせいか、メルトンに対して妙に遠慮する傾きがある。あとのものは皆和服で、かつ不断着のままだからとんと正月らしくない。この連中がフロックを眺めて、やあ――やあと一ツずつ云った。みんな驚いた証拠である。自分も一番あとで、やあと云った。
 フロックは白い手巾(ハンケチ)を出して、用もない顔を拭いた。そうして、しきりに屠蘇(とそ)を飲んだ。ほかの連中も大いに膳のものを突ついている。ところへ虚子が車で来た。これは黒い羽織に黒い紋付を着て、極めて旧式にきまっている。あなたは黒紋付を持っていますが、やはり能をやるからその必要があるんでしょうと聞いたら、虚子が、ええそうですと答えた。そうして、一つ謡いませんかと云い出した。自分は謡ってもようござんすと応じた。
 それから二人して東北と云うものを謡った。よほど以前に習っただけで、ほとんど復習と云う事をやらないから、ところどころはなはだ曖昧である。その上、我ながら覚束ない声が出た。ようやく謡ってしまうと、聞いていた若い連中が、申し合せたように自分をまずいと云い出した。中にもフロックは、あなたの声はひょろひょろしていると云った。この連中は元来謡(うたい)のうの字も心得ないもの共である。だから虚子と自分の優劣はとても分らないだろうと思っていた。しかし、批評をされて見ると、素人でも理の当然なところだからやむをえない。馬鹿を云えという勇気も出なかった。
 すると虚子が近来鼓(つづみ)を習っているという話しを始めた。謡のうの字も知らない連中が、一つ打って御覧なさい、是非御聞かせなさいと所望している。虚子は自分に、じゃ、あなた謡って下さいと依頼した。これは囃(はやし)の何物たるを知らない自分にとっては、迷惑でもあったが、また斬新という興味もあった。謡いましょうと引き受けた。虚子は車夫を走らして鼓を取り寄せた。鼓がくると、台所から七輪を持って来さして、かんかんいう炭火の上で鼓の皮を焙り始めた。みんな驚いて見ている。自分もこの猛烈な焙りかたには驚いた。大丈夫ですかと尋ねたら、ええ大丈夫ですと答えながら、指の先で張切った皮の上をかんと弾いた。ちょっと好い音がした。もういいでしょうと、七輪からおろして、鼓の緒を締めにかかった。紋服の男が、赤い緒をいじくっているところが何となく品が好い。今度はみんな感心して見ている。
 虚子はやがて羽織を脱いだ。そうして鼓を抱(か)い込んだ。自分は少し待ってくれと頼んだ。第一彼がどこいらで鼓を打つか見当がつかないからちょっと打ち合せをしたい。虚子は、ここで掛声をいくつかけて、ここで鼓をどう打つから、おやりなさいと懇(ねんごろ)に説明してくれた。自分にはとても呑み込めない。けれども合点の行くまで研究していれば、二三時間はかかる。やむをえず、好い加減に領承した。そこで羽衣の曲を謡い出した。春霞たなびきにけりと半行ほど来るうちに、どうも出が好くなかったと後悔し始めた。はなはだ無勢力である。けれども途中から急に振るい出しては、総体の調子が崩れるから、萎靡因循(いびいんじゅん)のまま、少し押して行くと、虚子がやにわに大きな掛声をかけて、鼓をかんと一つ打った。
 自分は虚子がこう猛烈に来ようとは夢にも予期していなかった。元来が優美な悠長なものとばかり考えていた掛声は、まるで真剣勝負のそれのように自分の鼓膜を動かした。自分の謡はこの掛声で二三度波を打った。それがようやく静まりかけた時に、虚子がまた腹いっぱいに横合から威嚇(おどか)した。自分の声は威嚇されるたびによろよろする。そうして小さくなる。しばらくすると聞いているものがくすくす笑い出した。自分も内心から馬鹿馬鹿しくなった。その時フロックが真先に立って、どっと吹き出した。自分も調子につれて、いっしょに吹き出した。
 それからさんざんな批評を受けた。中にもフロックのはもっとも皮肉であった。虚子は微笑しながら、仕方なしに自分の鼓に、自分の謡を合せて、めでたく謡い納めた。やがて、まだ廻らなければならない所があると云って車に乗って帰って行った。あとからまたいろいろ若いものに冷かされた。細君までいっしょになって夫を貶(くさ)した末、高浜さんが鼓を御打ちなさる時、襦袢(じゅばん)の袖がぴらぴら見えたが、大変好い色だったと賞めている。フロックはたちまち賛成した。自分は虚子の襦袢の袖の色も、袖の色のぴらぴらするところもけっして好いとは思わない。
元気があればDJもできる
 新団体「IGF」の旗揚げも非常に“らしい”ドタバタぶりですが、それにしてもこれはなんだったのだろう。↓

 アントニオ猪木:ラップで「元気ですかー!」DJにも挑戦 新曲「道」発売

 ラップはともかく、「DJにも挑戦」というのはどういう意味なのだろう。非常に気になります。

 少々意味は違うかもしれないが、伝説(?)の「引退試合」。僕は現場にいました。そして僕の感じでは、あれは相当変わった演出だった。「道」の朗読のことを言っているのではありません。挨拶から退場までの流れとして、非常に不思議な、ある種理不尽な構成だったと思えたのです。

 いまさらですがあらためて確認してみましょう。↓

 アントニオ猪木、引退の挨拶「道」

 文字に起こすとこういうことになります。

*****************

挨拶~「道」の朗読
10カウント始まる
マイクを返す
10カウント終わる
♪「運命」
花道を戻る
どんつきで立ち止まる。振り返り両手を挙げる(満面の笑み)
♪「イノキボンバイエ」
123ダー
♪「イノキボンバイエ」


*****************
 
 リアルタイムで観たときから、そして何の根拠もありませんが今でも疑いなくそう思っている一つの確信が僕にはあります。

 それはこの引退セレモニーを猪木本人が構成したのではないかということです。このセレモニーをプロの舞台監督、あるいは演出家が考えたとはどうしても思えません。誰が「運命」と「イノキボンバイエ」を繋ぐことができるでしょうか。誰が「イノキボンバイエ」を途中でミュートさせ、「123ダー」を挟み込めるでしょう。猪木しかいません
 
 というわけで僕は彼の舞監としての、あるいはDJとしての常識外れの才能を高く(?)買っていたのでした。「猪木、DJにも挑戦」。ほんとに気になります。
わるい予感
 約二ヶ月前。
 あまりにも日々ダラけていたので我ながらマズイと感じ、何か仕事でもしようと思い出した頃。丁度良いタイミングで昔登録していた派遣会社からメールがあった。コールセンターのオペレーターを募集しているという。具体的に言えば、電化製品の修理依頼を受け付け、PCに入力する仕事である。オペレーターなどやったことはないが、これも経験だと思い、研修に行ってみた。
  
 研修は二日間あった。その一日目、CSのなんたるかを叩き込まれた。オペレーターはお客様との接点であり、つまり、お客様にとっての「企業の顔」はオペレーターであるから、それを肝に銘じて対応しなければならないという。表現を少しづつ変えては何度も何度も同じことを聞かされるので非常に疲れた。そして研修を終えて電車で帰るとき、ある絶望的な光景が閃いた。もしかすると僕は知らぬ間に寝ていたのかもしれない。夢を見ているようであった。

 自分は電話の前で深刻な表情を浮かべて、祈るように両手を顔の前で組んでジッとしている。その姿はまるで子供を誘拐された男が犯人からの連絡を待つような仕草であるが、大きく違うのは、こちらでは電話がガンガンに鳴っている。電化製品が故障した怒りをぶちまけんとする有象無象の見えざるユーザーどもがその背後に透けて見える。しかし自分はジッとして動かない。ただ厳しい顔で、電話が鳴るのを「見て」いるのである。
「なんで電話に取らんのか」とある同僚のおばはんが近寄ってきて言った。
「取らんのじゃない。取れんのです」と僕は頭を抱える。「僕のように喋るのが拙い男が電話に出れば間違いなく我が企業の評判を落とすと思う。企業の顔として不適格です。雇ってくれた企業に迷惑がかかるから取るに取れんのです」
「ほな、もう辞めて帰ったらええやん」と苛立ったようにおばはんが言う。
「ところがそうもいかない。帰ったりすればこの企業に僕を紹介してくれた派遣会社の者の顔を潰してしまう。その人に迷惑がかかります。結局、どうしても僕はみんなに迷惑をかけることになる。だから僕は電話に出もせず帰りもせず、ただジッとしているしかないのです」と言って、僕はやっぱり深刻な顔で鳴り続ける電話をずっと「見て」いる。

 二日目の研修を終えた。その日は「敬語」を練習した。考えてみれば、僕はこれまで敬語なんて使っていないに等しいと思った。「分かりません」とは言うな、「分かりかねます」と言え、と教えられた。「できません」は「できかねます」と言わねばならない。研修を終えて帰る途中、僕は「できかねます」という言葉が妙に気になり始めた。そして、また絶望的な光景が頭に浮んだ。
 
 僕は電話で男に怒られている。不良品を売りつけやがって、新品に交換しろと男は怒鳴っている。ベテランのスタッフであれば立て板に水で男の論難をかわすのだろうが、何故だか僕の頭には「できかねます」という言葉以外まったく浮ばない。とにかく何を言われても「できかねます」としか僕は言えないのである。「できかねます」以外の言葉を僕は失ってしまっている。
「新品を持ってこい」
「それは…、できかねます」
「なんでやおまえ、ほな修理費タダにできるんか?」
「いえ、それもできかねます」
「それやったらおまえが弁償せえや」
 僕はついに黙り込んでしまった。そして最後にまた「できかねます」とだけ言って、一方的に電話を切った。その晩、僕は、僕の見た光景は疑いなく現実化すると感じた。一度そう思うと、時間が経つにつれますます確実なように思われた。やがて僕は派遣会社の者に電話し、この仕事は続けられないと重々しい調子で告げた。彼は、初めは誰でもそう思う。慣れれば簡単だ。それに私が電話で話している印象では、akaさんはきっとできると思うなどと慰留したが、「いや、そういう問題じゃありません。本質的に僕にはできない仕事だ」と僕は頑なに言って、もう一度「そういう問題じゃないんです」と言うなりもう一言だに喋るのを止めた。
 

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