FC2ブログ
out-of-humor2
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
紙資料について
 総じてCD宣伝用の「紙資料」なんてものには、データとしての意味以外に大した意味は無く、とりわけライターあるいはメーカーの人間の手による、あの思い入れたっぷりの、歯の浮くこと甚だしい、場合によっては嘘八百を並べ立てた推薦文なるものの胡散臭さときたら、ほとんど贔屓の引き倒しとしか思えないほどであるが、職業柄僕はそういうものに慣れていて、さらに言えば、かかるデタラメを述べねばならぬ書き手の境遇を思い、同情すらしていたのだったが、今度という今度は我慢ならなかった。例えばこんな調子である。

************************
 今までの○○の曲は、ブルースとフォークとロックンロールの間で定点を決めあぐねている感があったが、ここでは堂々と「自己表現を鳴らすことこそが、今この時のロックなんだ」という覚悟が決まったかのように、はっきりとしたギターとビートをぶつけている。結果的にそれはベッ○や○村○義が世に放たれた瞬間のようにオリジナルな衝動を激しく叩きつけながら、ヒップホップやらパンクやらブルースやらをごった煮にした独自のオルタナティブ性を響かせている。
~中略~
 ○○が自らの混沌を裸のまんま曝け出した迫真の自己告白であり、卓越した音楽観によって孤独の告白にポップの天使がたくさん訪れ、普遍性が宿ってしまった奇跡の作品集である。人によっては、天才的なソングライティングに耳を持っていかれるかもしれないし、人によっては現代性と狂騒のテンションを具体的に響かせ始めたサウンド・ダイナミズムに興奮を覚えるかもしれない。
~中略~
○○が覚醒したのか、それとも化けの皮を剥がして遂に本性を表したのか、僕にはわからない。何故なら彼は天才だからで、天才の考えることはよくわからないからだ。しかし、ここにはどんな音楽よりも生々しい「心」の動悸が鳴っている。つまり、本当のロックが鳴っているということだ。
************************
 
 しゃらくさいとはこのような文章のことである。一体この文章には、なにかを捏造しようとする情熱以外になにがあるのか。
 
 第一に、「堂々と『自己表現を鳴らすことこそが、今この時のロックなんだ』という覚悟が決まったかのように、はっきりとしたギターとビートをぶつけている」とはどういう意味か。自己表現とは何だろうか。
 第二に、「独自のオルタナティブ性」なるものがどういうものか分からないが、「ヒップホップやらパンクやらブルースやらをごった煮にした」程度のことで表現できるなら、このご時世もうみんなやっている。要するに少しも「独自」ではない。ところでこの人、まさかとは思うが次作の紙資料では「今までの曲はヒップホップとパンクとブルースの間で定点を決めあぐねている感が…」などと書きはしまいな?
 第三に、「迫真の自己告白」などというものを僕は信じない。仮にそれらしきものがあったとしても、それはほとんど「迫真」という形容とは程遠い、使い古された表現上の一フォームに過ぎん。そもそも「孤独の告白」なんてものはある程度「普遍的」なもので、誰しも多かれ少なかれ日常的に孤独を感じるし、告白している。「奇跡的に普遍性が宿ってしまった」どころかいかにも通俗、そんなものは深刻めかして読解してみせるようなものではない。
 第四に、「現代性と狂騒のテンションを具体的に響かせ始めたサウンド・ダイナミズム」とはどういう意味だろう。現代性だの世代性だの共時性だのといった概念は、言いようによっては何にでも当てはまり、こんな言葉はおどろおどろしいだけで少しも活力が無い。そして、何にでも当てはまるということは何も言っていないのと同じである。
 
 最後に、デビューしたての新人に対して、否、たとえ対象が誰であろうと、「天才」などという言葉を何度も用いる神経が僕には分からない。たとえ冗談だとしてもである。

 これを書いたのは某有名ロック雑誌の元編集長だが、果たして真面目に書いているのだろうか。あるいはこの文章は真面目に読まれているだろうか。とてもそうは思えない。おそらく、いい加減に書かれたものがいい加減に読まれている。では、この形骸化した儀式(セレモニー)になにがしかの意義があるかと言えば、冒頭に書いたように結局のところほぼ無いのであって、それならそれで構わないが、少なくとも僕はこういうもののせいで取材の意欲を著しく殺がれている。もちろんアーティスト本人に罪はない。が、そのことがますますこちらの意欲を減退させるのである。
スポンサーサイト
コメント
この記事へのコメント
数ヶ月前、取材の準備中に腹が立って衝動的に書いたものだが、おもしろいから載せてみた。
2007/10/13(土) 00:53:14 | URL | aka #-[ 編集]
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
http://outofhumor.blog49.fc2.com/tb.php/205-a52399ee
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
この記事へのトラックバック
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。